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金曜時評

重い政治家の言葉 - 編集委員 辻 恵介

 言葉の力は恐ろしい―。東日本大震災の被災地での暴言の責任を取り、5日に辞任した松本龍復興対策担当相(60)=衆院福岡1区=のことを見て、率直にそう思った。

 岩手県の達増(たっそ)知事との会談では「知恵を出したところは助け、出さないやつは助けない」、宮城県の村井知事に対しては応接室で待たされたことにクレームをつけ、「まず県で(漁港再編などの課題について)コンセンサスを得ろよ。そうしないと我々は何もしない」などと、脅し文句を連発したという。

 中央の視点から地方を見くだした、高圧的な発言で、現地の混乱や苦しみを理解していないことを自ら証明したようなものだった。現地入りで、疲れきった東日本の被災者を励まし、現状把握する大事な機会を愚かな言葉の積み重ねで台無しにしてしまった。

 さらに記者会見で「自分は九州の人間で語気が荒かったりして…」「私はB型で短絡的なところがあって…」とのたまい、九州人とB型の人たちの反発? を買うはめになった。かくいう筆者は「九州生まれのB型人間」であるが、薄っぺらで短絡的な今回の発言に今も怒りがくすぶっていて、議員辞職しない限り、怒りは治まりそうにない。

 任命した菅首相の責任は当然問われるが、6日の国会では責任追及の声も軽く受け流した感じで、やめる予定の人が元気になっているのは、極めて奇異に見える。野党の追及がやわなのか、非常にはがゆい思いがする。与党議員も沈みゆく船の行方をただ傍観しているだけのようで、一体いつまでこんな状態が続くのか。経費と時間の浪費でしかない。

 県選出の民主党国会議員の談話を見たが、ほとんどが「擁護」の姿勢で残念だった。大臣と知事が、元同僚だった、気心の知れた仲だった、そんな人間関係の中での発言だった、とかいったことは言い訳めいている。「親しき仲にも礼儀あり」というではないか。

 復興へ向けて総理大臣補佐官として、松本氏と同じように重要な任務についていた馬淵澄夫衆院議員には、ぜひとも感想を聞いてみたかったが、「本人が忙しく、連絡がとれなかった」とのことで、ついに聞けなかった。県民が知りたがっていることに、どうして答えられないのか、理解に苦しむ対応ぶりだ。

 一方、松本氏の発言に関して、5日の定例会見で奈良市の仲川市長は「知恵を出さないやつは助けない」などの発言について「深い意図はなく、その方の個性の範囲だと思うが、そこはTPOの世界でしっかり分別する必要がある」と、こちらもどちらかと言えば擁護派。「最もたちが悪いのは霞が関の官僚」との官僚批判まで展開、ポイントが少しずれているように感じた。

 言葉は、特に政治家の言葉は重いものだ。この非常時にありながらなお繰り返される軽率な発言に、国民は嫌気がさし、ますます政治離れを生む一因にもなっていることを「センセイ方」には深く認識してもらいたい。

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