注目記事奈良県内の自治体異動名簿掲載

金曜時評

設置へ県民運動を - 論説委員 小久保 忠弘

 JR東海がリニア中央新幹線の全線開業を目指している2045(平成57)年といえば、今から34年後。この世に自分がいるかどうか定かでないが、東京―大阪間の所要時間が1時間7分と聞くと、さらに長生きして夢の超特急に一度は乗ってみたいと欲が湧く。JR東海は先ごろ、東京のターミナル駅はJR品川駅、大阪は東海道・山陽新幹線の新大阪駅とする方針を明らかにした。県民としては早期全線開業はもちろん、「1県1駅」としている中間駅の場所に関心を持たざるを得ない。リニア奈良駅を実現させるためには官民一体となった運動を展開する必要があろう。

 当初計画から既に38年。概算建設費9兆300億円のビッグプロジェクトである。超伝導磁気浮上方式のリニアモーターカーによる時速500キロ以上の高速走行で、経済効果は21兆円と試算されている。

 「たんに移動距離と時間を短縮するためだけに、そんな巨費を投じる必要があるのか」という議論がある。そんな人は、従来の新幹線か東海道線を乗り継げばよい。当面、東京一極集中が解消されない以上、首都とのアクセスはより短縮されるべきだ。

 阪神大震災で山陽新幹線が長期にわたり不通になったことや、東海道新幹線が想定される東海地震の予想被災地域を通ることを考えれば、大動脈にバイパスが必要なことは論をまたない。今回の東日本大震災でも東北新幹線の復旧が被災地復興の指標になった。

 JR東海は、2027(平成39)年に先行開業を予定している東京―名古屋間の「中間駅」案を、月内に沿線自治体に提示する方針を固めたという。いよいよ「1県、1駅」が具体的に動き出す。奈良はまだまだ先だとは言っておられない。

 県は本年度、リニア奈良駅設置に伴う経済効果調査を初めて行うことにしており、当初予算に500万円を盛り込んでいるという。先日、都内で開かれた建設促進期成同盟会の総会で副会長でもある荒井正吾知事は、国の整備計画に「奈良市付近」が明記された点を評価し、「在来線や新幹線、高速鉄道などとマッチする高速鉄道機能が大事。リニア駅の早期着工を求め、JR東海と検討していきたい」と決意を述べた。

 荒井知事は、旧運輸省出身で鉄道行政を熟知し、昨年の平城遷都1300年祭の成功と平城宮跡の国営公園化に力を発揮したことは周知のとおり。その手腕をもってすれば、リニア奈良駅の早期実現は決して夢ではない。さらに短くはあったが国土交通大臣として活躍した県選出の馬淵澄夫衆院議員が政府中枢にいる。原発事故収束の次はリニアであろう。

 関西の一員でありながら、なお独自性が発揮されない現状を打ち破るためにも、県民挙げて誘致開業への運動を盛り上げる必要がある。これこそ「ポスト1300年」の目玉事業であり、沈滞する関西経済浮揚のチャンスになり得る。まずは奈良駅設置からだ。



リニア奈良駅

設置へ県民運動を

論説委員 小久保忠弘

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