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金曜時評

問題は市長の意識 - 編集委員 北岡 和之

 奈良市の将来像を展望するため、行政で最上位計画に位置付けられるのが総合計画。その第4次の基本構想・基本計画案が先日、同市議会で否決された。目標年度は、基本構想が平成32年度、前期基本計画が27年度。4月からの新年度予算に反映させねばならないものだが、総合計画策定にストップがかかったことで市の行政は暗礁に乗り上げた。

 仲川元庸市長は総合計画案が否決された7日の臨時市議会の後、報道陣に「否決は前例がないので、今は方策が考えつかない」と語ったという。心情は察するが、反省点は何かを把握して、深刻な事態を早急に立て直さねばならない。できなければ、市長失格と言われても仕方があるまい。

 仲川市長はまた「連絡所の存廃にかこつけて否決するのは議論のステージが違うのではないか」とも話したという。この発言はおかしくはないか。行政の出先機関で、現在11ある連絡所を3カ所に統廃合すると市長が言明したことに、関係する地元から反発が出て「連絡所廃止計画は一旦ゼロベースに戻し」とブログに公開したのは市長自身である。

 市議会の総合計画検討特別委員会で第4次総合計画の基本構想・基本計画案が採決されたのは今月4日。採決の結果は公明、民主両党会派の各2人と政友会、無所属の各1人の計6人が賛成、反対したのは政翔会3人、共産党会派2人の計5人。仲川市長のブログでの発言は6日付で、議会への請願書や要望書などの扱いがこの間どうなっていたのだろうか。まさか、請願書や要望書などは大したことではないと無視していた訳でもあるまい。7日の臨時市議会までに、総合計画案では連絡所の問題を白紙に戻すと正式に表明しておくべきではなかったか。

 そして、先に挙げたように市議会・特別委での採決の結果は6対5という僅差での可決だった。これをどう見ればいいのか。連絡所存廃問題が要因の一つだったには違いないだろうが、それだけで賛成・反対が拮抗(きっこう)したとは思えない。

 昨年12月の定例市議会で、総合計画検討特別委の天野秀治委員長が中間報告した。話題になった433カ所の問題点指摘については「修正76、追加189、加筆29、削除8、要検討82、条例追加削除33、計画追加修正3、用語解説追加5、委員長保留8」としている。

 また「構想では人口減少を享受し、歳入の減少や社会保障費の増大を予測しておきながら、基本計画はこれまでの積み上げ方式と思われるビルド型の政策」となっていると批判しているほか、「計画のベースとなる人口推計にも問題」などとしていた。

 極め付きは「市長が計画変更の手続きを未だに明確にしようとしないことは、マニフェストありきで計画に沿った行政運営を意識していないことを証明する」。この中間報告を受けて根本的に手直しされたのかどうかは疑問。やはり一から見直すべきだろう。

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