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金曜時評

競争こそ地域力に - 論説委員 小久保 忠弘

 県が発行する遷都1300年記念プレミアム商品券が売れているらしい。1冊1万円。なけなしの蓄えをはたいて15%お得の特典に長い行列ができた。原資がある人は買える余裕があるのだろうと思ったが、真剣に「生活防衛だ」という声が返ってきた。先の見えない不況である。雇用はさらに厳しい。「その方面には疎い」と真顔で経済観を披露した菅直人首相はこの行列を何と見るか。

4月の統一地方選挙まで、あと2カ月を切った。地域のみならず、国や世界の明日を展望し、変革し得る選択のチャンスが一斉に巡ってくるという意味でも、大切な政治参加の機会である。そのためにも、身近な地方政治の動向に関心を持ち、常に監視し、積極的に関与することが求められる。

 選挙の年の先陣を切って、先月行われた平群町長選は4年前のリターンマッチとなり、現職がわずか28票差で当選したことは、選挙の妙をみるようで当事者ならずとも衝撃的だった。数字だけを見れば、町を二分する緊張感が結果となって表れたのだろう。そうであればこそ、せっかくの選挙権はフルに生かしたいものだ。高い投票率が地域に緊張感を生み、住民の自覚を促し、個々のコミニュティー意識を向上させる。そして1票の重みが政治家を鍛える。

 1票を争う戦いであれば勝敗こそ全てではあるが、勝ち負けだけに意味があるのではない。統一選は地域が抱える現状を知り、問題点を確認する良い機会でもあろう。候補者が政見を語り、政策を競う選挙戦そのものが次代を占う場である。

 そのことからすると、無投票の首長選や議員選が増えるのは憂慮すべきことだ。関係者同士が事前に一本化を図る出来レースはもってのほかだが、過疎や経済的理由などで立候補できない環境があるとすれば、民主政治の根幹を揺るがす。およそ公党で試合放棄のごとき相乗りや不戦敗は、選挙民に対する裏切り行為だろう。党派の使命を忘れてもらっては困る。

 「その選挙が選挙人の自由に表明せる意思によって公明且つ適正に行われることを確保し、もって民主政治の健全な発達を期することを目的とする」と公職選挙法はうたう。自由に表明できる場が保証されているにもかかわらず、競わないというのは民主主義の成熟だと自慢できまい。いつの時代でも切磋琢磨(せっさたくま)こそ人類進歩の母である。

 プレミアム商品券の15%のうち10%は県費だという。税金を使って消費拡大を図らなければならないほど県内経済は脆弱(ぜいじゃく)だ。課題はたくさんある。菅首相が掲げる社会保障と一体的に考える消費税増税や、環太平洋連携協定(ТPP)交渉入りの是非など、地方にあっても真剣な論議を尽くさねばならない。首長であれ議員であれ、強いリーダーシップの有無が問われよう。プレミアム商品券の行列以上に大事な選挙である。

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