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金曜時評

春まで熱い論戦を - 編集委員 北岡 和之

 鹿の縁で春日大社とも関わりの深い鹿島神宮のある茨城県。その同県で先日、県議会議員選挙が行われた。わが県の2倍以上もある300万人近い人口を抱える県だけに、県議選の定数も、わが県の44(16選挙区)に対して65(36選挙区)に上る。

 結果は、報じられているように民主党の惨敗だった。同党は推薦1人を含む24人を立てたが、現有の6議席にとどまった。自民党も世代交代などでやや減らしたが、それでも33議席と過半数を制し、底力を見せつけた。

 昨年夏の総選挙で民主党が大勝し、「政権交代」が実現。保守王国の茨城県も例外ではなかった。同県の7小選挙区のうち、自民党が勝ったのはわずか1選挙区だけ。そしてもう一つ、元自民党のベテランが無所属で当選した。自民党の現職が次々と敗れ、民主党は比例復活を含めると全員当選だった。

 こう振り返ってみると、当時の状況はわが県とよく似ている。民主党は4小選挙区で比例復活を含むと全員当選、自民党は1選挙区でベテランが制したものの、比例復活で県関係のもう1議席を得るにとどまった。

 民主党の大勝は政権交代によって変わる政治への期待の大きさを如実に示していた。

 ところが、あれから1年が過ぎて事態はどうなったか。スローガン倒れだったことを裏付けるような「政治主導」をはじめ、迷走ぶりが目立つようになり、ここに来て党分裂の可能性さえささやかれるようになった。

 こうした民主党の不安定感を鋭敏に感じ取った有権者の下した状況判断が、茨城県議選の結果に表れたと言っていい。来春の統一地方選を占う前哨戦だったが、この結果はまさに有権者が同党に対し、“仮免許”しか与えていなかったことを示した。

 来春の統一地方選は、政権交代後の最初の大型地方選挙として、各政党の「足腰の強さ」が浮き彫りになる選挙だ。選挙地盤の裾野の広さが勝敗を左右するとすれば、要は有権者の胸の奥まで飛び込んだ地道な活動をやっているかどうかだろう。わが県の滝実・民主党県連代表が指摘するまでもなく、同党の足腰はまだまだ十分とは言えない。

 一方、長く政権の座にあった自民党にしても、各種世論調査などが示しているように、底力はうかがわせるが決して盤石ではない。本県においても、統一地方選を前にしてまだ県連体制ができていないし、議員増に向けた動きも表に出てこない。他の政党にしても、勢力拡大に向けた散発的な動きはあるものの、うねりになるようなものは感じられない。

 県内では、知事選に向けて民主党県連が事実上の独自候補擁立見送りとなった以上、関心はどうしても県議選に向かう。ところが同党中央の“内紛”が予断を許さず、来年4月に「桜の花が咲く」のは誰か、勢力図はどう変わるかは全く見通せない。気の早い予測などは慎むとして、まずは各立候補予定者が県民にアピールする熱い論戦を。

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