特集奈良の鹿ニュース

金曜時評

争い超えた成果を - 編集委員 松井 重宏

 注目された県議会の正副議長選は自民党から出口武男議長、民主党から藤本昭広副議長を選出。2年連続して自民、民主の2大会派による連携で決着が図られた。議会運営を考えれば最も安定した形とも言えるが、昨年は政権交代を問う衆院選を間近に控えていたし、今年は参院選直前の議長選。国政の場で両党が激しくぶつかり合う最中に、あえて県議会が「民主・自民」連携を選択したことには疑問の声も挙がる。

 事実、自民党内では事前の候補者調整の段階で民主党との連携に反対する議員3人が会派を離脱。参院選はもちろん、来春の統一地方選も視野に入って来るこの時期に「(役員改選で)民主党と手を組むことは納得できない」として新たに自民党未来を立ち上げる事態に発展した。

 改革、未来の両会派とも「党を割るものではない」として、目前の参院選には挙党態勢で取り組む姿勢を強調するが、党県連を引っ張る県議同士の足並みの乱れは有権者を戸惑わせることになりそうだ。

 これで県議会内の自民党勢力は一昨年に結成された自民党改革と合わせて3会派に分裂。平成19年の県議選直後には全議席44の半数を超える23人を誇っていた自民党だが、主流派の会派所属議員は14人まで減少する結果となった。もっとも、自民党会派が3分裂した背景には長年にわたる党内対立による確執が指摘されており、必ずしも意外な展開ではないとする見方も強い。自民党改革は、過去に議長ポストをめぐって主流派と争ったグループが、保守系の別会派から合流した議員とともに結成。今回の自民党未来も、参加した3人はいずれも保革合同会派の新創NARAから自民党に移籍した議員で、分裂は「元に戻っただけ」とも見える。

 国政レベルの政界再編が山を越え、2大政党を軸にした構図が定着する中で県会自民党も一本化の動きが加速してきたが、民主党による政権交代が現実する過程で自民党内の求心力が低下、逆に民主党との距離を測る新たな動きも出てきた結果が、ここ2年間の議長選にも投影されているのかもしれない。

 一方、民主党は2年連続で副議長ポストを得て議会内の重みを増しているが、数に優る自民党との連携は、安易で軽率との批判も受けかねない。さらに先の副議長辞任問題の究明、けじめをおざなりにしたままでは、有権者の支持も理解も得られない。

 首相交代を機に支持率がV字回復した同党は過去最低の法案成立率55.6%をあえて受け入れ、国会審議を投げ打ってでも早期に参院選に突入しようとしているが、同党県連も同様に「政治とカネ」の問題に目をつぶったままやり過ごそうとしているのか。

 また党派間の争い以前に、県会には県政が抱える諸課題への対応が強く求められていることも忘れてはならない。再登板となったベテランの出口議長の手腕に期待が集まる。

特集記事

人気記事

  • 奈良の逸品 47CLUBに参加している奈良の商店や商品をご紹介
  • 奈良遺産70 奈良新聞創刊70周年プロジェクト
  • 出版情報 出版物のご購入はこちらから
  • 特選ホームページガイド