特集奈良の鹿ニュース

金曜時評

議員辞職しかない - 編集委員 水村 勤

 宅建業者を利用して不動産手数料を手にしていた田尻匠県議(民主)が14日、副議長を辞職した。きのう15日には、それに関連した記者会見を民主党県連幹部が県庁内で開き、弁明した。当事者の田尻氏はまたしても不在だった。「種々の報道による心労で疲れて正常な判断能力も使えない状態」(顧問弁護士)なのだという。もちろん、信用できない。政治家にとって、一番大切なのは出処進退だ。たとえ、目の前にどんなに厳しい困難が待ち受けようと、「本人不在」は田尻氏にとって、非常にまずい。このままでは、無責任を絵に描いたような逃げっぷりが際立ち、民主党のダメージを強めてしまう。

 この日の会見で県連側は、大手ハウスメーカーから受領した金銭は「謝金」とし、名目が不動産の仲介手数料という認識の下に宅建業者から受け取っていることを認めた。田尻氏の側に百歩譲って法的な見解は別としても、田尻氏自身が不動産取引の流れの中で発生・処理する金銭を受け取る認識を持っていた。このこと自体が重大なのだ。

 だから、県連のまとめた経過報告は「いささか政治家として品性を問われても仕方のないところ」と、ようやく田尻氏の政治家としての金銭感覚の問題点を指摘。顧問弁護士によると、田尻氏は「このようなカネは道義的に問題で『行儀が悪い』と非難されても仕方がない」などと言っている、という。それにしても、自身の出処進退という重大事を、他人に代わってもらう感覚が分からない。

 中央では政治資金規正法違反で国会議員の“分身”とでもいうべき秘書が逮捕され、あるいは起訴されても、議員本人は何ら責任を取ろうとしない。それが鳩山由紀夫首相と小沢一郎幹事長という、民主党のツートップなのだ。共同通信社の今月3、4日に実施した世論調査でも、鳩山内閣の不支持率は53.3%と50%を超えた。小沢幹事長の進退についても「幹事長を辞めるべきだ」が81.4%となり、国民の支持を失いつつある。この事実を深刻に受け止めるべきだ。

 党県連は18日、常任幹事会を開き、田尻氏の処分について話し合う。当日はぜひ、田尻氏は自ら出席して発言すべきだ。本人が党の役職を返上する意向であるようだから、たぶん、そうした決定になるのだろうが、この際、田尻氏は議員辞職することを幹事会で表明し、一から出直した方がいい。それが、弁明に付き合ってもらった山下力県議団長と、藤野良次県連幹事長への“友情”に応える唯一の道であると思う。

 田尻氏の今回の1件について、山下氏は「まじめにやっている同僚県議に同じような疑惑をもたらしかねない。彼の(副議長)辞職は当然」と述べていたが、もし、田尻氏が逡巡(しゅんじゅん)するなら、議員辞職こそを勧めてもらいたい。

 それぐらいの厳しさを示すことが、今の民主党を救う道でもある。

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