特集奈良ラーメン探検隊活動中!

金曜時評

疑惑の徹底解明を - 主筆 甘利 治夫

 わざとなのか、それとも理解する能力が欠けているのか。

 JR奈良駅前ホテルの建設失敗に伴う産廃問題で、奈良市議会が山本清議長と5会派の幹事長名で、仲川元庸市長に「土壌調査」の申し入れをした。

 これは一連の疑惑の本筋ではない。たまたま出てきた傍流の問題で、お茶を濁そうとするつもりなのか。1人1人の議員の資質と、政党の政治姿勢が問われる問題だ。個々の議員に話を聞けば、この疑惑について憤り、理解しているかのような態度を見せ、いざ真相究明となれば及び腰になる。「なぜ、そうなるのか」と、そこにも新たな疑惑が生じている。

 まず第一に、一昨年の「JR奈良駅前ホテル開発」会社(米田稔社長)設立の経緯そのものが不透明だ。実質オーナーの川井徳子氏と、藤原昭・前奈良市長との間で、どのような約束事があったのか。資本金1000万円の「にわか作り」の会社で、実績もなければ信用力もない、まして経営体力のない会社に、どうしてホテル建設などできると思ったのか。当初から危惧(きぐ)された通りの結果になった。藤原氏や川井氏の「自信」と「はりきりぶり」は見せかけだったし、伝えられた国会議員の関与も、功を奏しなかった。

 しかも、同社は10億円の土地を、産廃の埋設を承知で2億円も安い8億円で取得している。瑕疵(かし)担保責任は買い主が知らない場合に限られる。自前で産廃処理をすればよいのに、処理費用を「補償費」なる名目で、市の税金で負担させようという、不可解な展開になった。そんな理不尽な約束をした藤原氏の責任は重大だし、税金という市民の金を無駄遣いするなら、市に損害を与えることになり、損害賠償を求めるべき内容だ。

 藤原氏と川井氏の共通の知人が、ホテル建設の無謀さをアドバイスしたのに、それでも強引に進めた背景に何があるのか。ホテル建設の失敗を理由に、再選不出馬を表明せざるを得なかった不可解さが残っている。素人でも分かる無謀な計画を、推し進めた裏に何があるのか。

 この産廃処理をめぐる交渉も、きわめて不可解だ。産廃業者の選定と実際の処理費用が、いまだに明らかにされていない。3度目となった予算案の実質否決にみられるように、市の要請を拒否している実態不明の「ホテル開発」会社そのものを、追及すべき時がきている。行政をチェックすべき議会が、なぜ黙っているのか。

 3月議会のなかで、民主党推薦で当選した仲川市長の業者擁護の姿勢が明確になった。疑惑解明の意思もなく、無駄遣いを推し進めようというのだからあきれる。

 議会もそうだ。仲川与党の民主党は「疑惑がある」(山口誠幹事長)ことを承知しながら、疑惑隠しの急先鋒だった。業者と近い関係にあるから、真相解明できないのか。それだけに、不正追及に最も熱心なはずの公明党や共産党の姿勢が気になる。

 保守系会派の政翔会や政和会も、議員に温度差がある。業者との関係を指摘される議員もいるし、今後の動きをじっくり見ていく。

 なぜ百条委員会なり調査特別委員会を設置しないのか。設置したくないのか。億単位の税金を、不当に支出してはならないし、このカラクリを白日のもとにさらすべきだ。業者擁護の背景は何か、疑惑隠しを進める政党・議員について、他の問題も含め、さらに追及していく。

特集記事

人気記事

  • 奈良の逸品 47CLUBに参加している奈良の商店や商品をご紹介
  • 奈良遺産70 奈良新聞創刊70周年プロジェクト
  • 出版情報 出版物のご購入はこちらから
  • 特選ホームページガイド