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金曜時評

議会の良識を示せ - 編集委員 松井 重宏

 鳩山政権が初めて編成した国の平成22年度予算が成立した。多額の新規国債発行を盛り込んでおり、財政再建への悪影響が懸念されるが、戦後5番目となる早期の予算成立は地方自治体にとって好材料。県内でも各市町村の3月定例議会が来年度予算など重要議案の審議を終え、住民に身近な地方行政の充実に向けた施策が出そろいつつある。

 そうした中で一部の自治体では理事者側の原案に対して議員が修正案を提出、可決される場面が相次ぎ、注目を集めている。

 特に奈良市では、前市長時代から積み残されたままになってるJR奈良駅前ホテル建設の産業廃棄物処理問題で、仲川元庸市長が本年度一般会計補正予算案に補償費1億6500万円を計上。安易な予算化というより、意図的な問題隠しも指摘され、議員から減額修正案が提出、可決された。

 同問題では、ホテルの建設予定地に埋まっていた石炭ガラの処分について市が負担すべき責任の範囲、費用負担額の確認が論議される中で、同廃棄物が、産廃処理の許可を持たない運送業者、建設会社を介して処理された経緯に疑問が浮上。また産業廃棄物管理票(マニフェスト)には最終処分した処理業者が明記されているのに、市には仲介した業者からの経費請求書だけが提出され、なぜか処理の実費を示す詳細な書類が存在しないと説明されている点も納得がいかない。

 市議による補正予算案の修正可決は、こうした重大な疑問点を見過ごさず、あらためて問題化する効果をもたらした。

 このほか、奈良市では仲川市長が選挙公約に掲げ、新年度予算案に計上した「1%支援制度」を全額削除する議員修正案が可決される見通しとなっており、生駒市では山下真市長が提案した第5次市総合計画の基本構想について表現をより明確化する内容で修正案を可決。逆に議員提案された市立病院設置条例案の一部改正案は否決された。

 五條市の新年度予算案をめぐる吉野晴夫市長と議会による攻防は市長の再議権行使に発展、やや迷走ぎみだが、予算の編成権を持つ首長に対し議会が積極的に対応、必要と判断すれば修正を試みる姿勢は評価される。首長には強いリーダーシップが求められるが独善は許されない。議会も党利党略、利権を排したところで施策づくりに関与、首長と議会がともに能動的に機能することが重要だ。

 奈良市の産業廃棄物処理問題では、仲川市長が疑惑の核心部分を隠ぺいしたまま、業者と具体的な金額交渉に入るため補償費を予算化。これを支持する民主党など市議についても政治姿勢が問われている。また前市長時代に端を発する同問題で、新たに当選した仲川市長とをつなぐものも焦点。

 産廃処理がなぜ業者を仲介して行われたのか疑惑が膨らむ中、徹底した疑惑究明へ百条委が設置されるのか。補正予算案の修正に終わらない議会の対応が期待される。

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