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金曜時評

議員は利で動くな - 論説委員 小久保忠弘

 21日に告示される宇陀市議選が同日告示の市長選に劣らず激戦らしい。「落ちてもいいから出たい」と意気込む候補予定者もいるというから、地域の未来と住民福祉向上のために一身をささげるというより、不況下にあって、定収の見込める議員商売が魅力に映る向きの方が多いのかもしれない。

ことほどさように景気の低迷と収入減は市民生活を直撃している。昼はコンビニどころか、100円ショップのお得用弁当で済ますという光景も珍しくないご時世だ。

 だからこそ、行政の無駄遣いには政府や自治体の掛け声を聞くまでもなく、納税者は税の使途に厳しい目を注ぐのである。いま確定申告のピークを迎えて、1円でも正直に節税しようと事業者は必死の思いでいることも忘れてはなるまい。

 奈良市は、3月議会にJR奈良駅前ホテル事業の「負の遺産」と言える「石炭ガラ」の産廃処理費用1億6500万円の補正予算を計上した。これまで報道してきたように、藤原昭前市長がホテル建設白紙で立ち往生し、出馬断念の引き金になった「石炭ガラ」問題。業者の言いなりになって貴重な税金を使っていいのかというのが最大の論点だ。

 当の業者は石炭ガラを産業廃棄物として、いつ、どこへ運び、どのように捨てたのか詳細を明らかにしていないという。これまで2回、議会が同予算を通さなかったのは産廃処理の「精算報告書や領収書がなく、積算根拠がない」というのが理由だ。

 今回またぞろ市は補正予算に上げてきたが、業者救済を最優先しているとしか思えないお役所仕事なのである。これをチェックし審査するのが議会および議員の役目であろう。市民の負託を受けて当選した議員は、行政の税金の使い道に事細かく目を配るのが仕事であることを忘れてはなるまい。まして不透明な業者の言い分を唯々諾々とうのみにしているようでは職務怠慢のそしりを免れない。

 仲川元庸市長は昨夏の就任以来、無駄遣いをなくそうと従来施策を見直し、予算カットに血道を上げてきた。それが選挙公約(マニフェスト)でもあった。秋の事業仕分けで60の事業について検討を加え、老人福祉や教育、医療、危機管理にまで「不要、要改善、民間実施」と格付けする大なたを振るい上げた。名指しされた事業にかかわる市民の怨嗟(えんさ)の声が多数寄せられたところだ。

 そのひるむところのない苛烈さを、なぜ石炭ガラの産廃処理費については手を緩めるのか解せない。まさか前任者から格別の引き継ぎを受けているのではなかろうが、疑わしい行動は市民を裏切る。「タナぼた」のように降って来た昨年の市長選は何が原因で実施されたのか、なぜ藤原市長が出られなかったのか、もう一度当時の新聞を読み返して勉強されることをお勧めする。さらに議員諸氏は自己の損得で動くのか、事の正邪善悪で動くのかよく考えて行動すべきであろう。

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