特集奈良の鹿ニュース

金曜時評

特別背任未遂罪か - 主筆 甘利 治夫

 不当に安く売却しようとした特別背任未遂罪(刑法250条)に当たるのではないか。今年5月には当時野党だった民主党の原口一博衆院議員(現総務相)ら社民党、国民新党の有志12人が、宿泊施設「かんぽの宿」をオリックス不動産に不当に安く売却しようとしたとして、日本郵政の西川善文社長を特別背任未遂罪で東京地検に告発している。まったくよく似た構図だ。

 高取町の土地開発公社(理事長=植村家忠町長)が今月19日に実施した入札は、植村町長が、密接な関係にある医療法人中川会(瀧村力理事長)に売却しようと当初から力を入れてきたが、結局、中川会のみが参加するという競争入札になり、売却が決まった。まさに「中川会への売却ありき」が貫かれた。

 その内容は5746平方メートルの土地を、中川会が6001万円で落札した。

 今年3月の理事会において、平成21年度予算審議のなかで事業計画書の処分計画に「福祉施設用地(特定土地)7525平方メートル、4050万3000円、民間売却」と明記されていた。これについて理事からの質問があり、中川会へ売却しようとしていたことが発覚した。

 この土地は、昨年1月に業務上横領容疑で逮捕された前理事長の筒井良盛・前町長が推進してきた「新市街地開発事業用地」の「福祉ゾーン」。同事業については、植村町長が全面撤退の意向を表明している。

 その「福祉ゾーン」とされた土地は、取得時に約4億1500万円で購入していたもので、その10分の1以下となる価格で、中川会に売却しようとしたから問題になった。植村町長は強引に採決しようとしたが、「不動産鑑定士を入れよ」「公売にすべき」などと批判が高まり、今回の入札に至った。

 この入札の公売公告によると、理事会で問題になった時の面積から1779平方メートル(23.6%)も減っているが、それにもかかわらず落札金額はその時の約1.5倍も高くなり、約2000万円の増となった。

 もし理事が問題化して追及、本紙など地元紙が報道していなければ、約2000万円もの損害を与えていたことになる。それだけに追及した理事の功績は大きいといえる。だからこそ、植村町長は不当に安く、しかも密接な法人に売ろうとしたことになる。

 この入札の公募で、面積を1779平方メートルも減らしたのはなぜか。当初の予定通りに、7525平方メートルのすべてを売却して入札すれば、今度の落札結果に換算すると7858万円となり、2000万円どころか3800万円もの損失といえよう。面積を減らし売却したことの説明は何もなく、その裏に何があるのだろうか。疑惑がまた増えた。

 3月の理事会の席上、どうしても中川会に売却したかった植村町長は「土地売買とは別に中川会から町に1億円寄付してもらえる」ことを明らかにし、賛成してほしいとしていた。結果的に中川会が落札したことで、植村町長による「中川会への売却ありき」は、達成したことになるが、あとは約束である「中川会から町への1億円の寄付」を待つことと、新たな疑惑の解明だ。

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