特集奈良の鹿ニュース

金曜時評

親子で語り合おう - 編集委員 辻 恵介

 40日近くの長い夏休みに入っている子どもたちも、ぼちぼち折り返し地点に近づいてきた。宿題を早々に片付けた子、まだ休みはたっぷりあるからとのんびり構えている子、と休みの過ごし方もいろいろだろう。のんびり屋さんには、親として小言の1つも言いたくなるのが人情だろうが、これもまた、その子の個性なのかもしれない。

5日付2面で、親としていささか気になる記事があった。昨年実施された全国学力テストの公立小6年生の結果について「保護者の年収が高い世帯ほど子どもの学力が高い」ということが、文部科学省の専門家会議の追加調査で分かったという。年収1200万円以上では国語、算数の正答率が平均より8~10ポイント高く、200万円未満は逆に10ポイント以上低く、所得の高低で最大23ポイントの差が開いたそうだ。

 また、学校外の教育費支出を調べたところ「月に5万円以上」は正答率71.2%、「支出なし」は同44.4%で、26.8ポイントの差があった。塾などへの教育費の投資の有無がこの差を生んでいるようだが、長引く世界的な不況の嵐の中で仕事を失う親も増えている現状を見るとき、これは酷な調査結果に思える。

 全国学力テストの結果と年収の相関関係を裏付けるデータの公表は初めてで、公教育をめぐり低所得者の支援が課題となりそうだ、と記事は結んであった。

 衆院選公示を前に今、各政党がマニフェストを公表し、マスコミでも「自民VS民主」というくくりを中心に盛んに比較が行われている。教育関係をめぐって手当支給の話などもあるが、日々の生活費に消えてしまう可能性もあり、本来の趣旨が生かされない事態も出て来るのではないかと危惧(ぐ)している。この国の将来を担う子どもたちの学力が本当に向上していくための施策を考えてほしい。

 一方、所得格差ばかりに目を向けるのではなく、学力向上へのヒントが記事の最後にあった。「学力の高い子の家庭はニュースや新聞記事を話題にしたり、親が言わなくても子どもが自分から勉強したりする傾向が強いことも分かった」という部分だ。

 ここには、さまざまなニュースについて、日々の暮らしの中で親子で語り合う時間を持つことの重要性が指摘されている。小さいころから子どもの疑問に向き合っていく親の姿勢が、子どもの「学ぶ意欲」を引き出していくのではないか。図書館や学校図書を上手に活用すれば、自学自習意識は自然に高まっていくだろう。小さいころからの絵本の読み聞かせなども、その1つといえるだろう。

 絵本といえば、今年も「絵本ギャラリーin奈良」が今月29、30日に奈良教育大学で開催される。今年は節目の10回目。赤ちゃん絵本、人形劇、シャボン玉遊び、各種クラフト製作、映画上映、絵本作家の講演会など盛りだくさんの内容となっている。初日には人気者の「せんとくん」も会場にやって来る。夏休みの最後に、親子でいい思い出づくりを。

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