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金曜時評

これぞ自民党劇場 - 編集委員 北岡 和之

 これぞ自民党、とはやしたくなるほどの大活劇の舞台が永田町で繰り広げられている。奈良市長選や静岡県知事選など地方選挙で連敗が続いた同党が、次期総選挙に向けてどう態勢を立て直すのか、誰もが注目していた。

 まず驚かされたのが、奇策とも言うべき麻生太郎首相の「予告解散」。「今月21日の週に」衆院を解散し、8月18日告示、30日投開票という日程を明らかにしてから舞台は回り始めた。次に出てきたのは党の衆参両院議員総会の開催要求。最初は、地方選敗北の総括や総選挙を前にしての麻生首相の決意表明、政権公約(マニフェスト)の確認などを求める内容と聞いていたが、それどころか「麻生降ろし」へと発展させようとするもくろみもあったかのような報道も出てきた。

 「さあ、選挙だ。みんな頑張ろう」で終わるはずがないとは思っていたが、さすがである。地方選の連敗を受け、策もなしにおとなしく衆院解散―公示―投開票と進むだけでは盛り上がるはずがない。自民党を注目させる舞台をきっと仕掛けるだろうと思っていた。政策で勝負するのが本筋の話。しかし「目立ってなんぼ」の一面も選挙にはつきまとっていると言うべきだ。

 4年前の「郵政解散」で大勝した際の舞台は「小泉劇場」と呼ばれた。今回どう名付けていいのか分からないが、自民党の国会議員は総出で舞台に上がり、両院議員総会の開催をめぐって丁々発止の役回りを見事に演じている。その行き着く先が「一致団結」「挙党一致」であればいいのだ。

 「政権交代」を目指す民主党などの政党にしても、言うことがバラバラの自民党の本当の怖さを十分承知しているに違いない。どこを切っても同じような顔しか見えない金太郎あめのような組織は一見、一致団結しているようでも、実はもろいものだからだ。

 両院議員総会の開催に必要な署名(党所属国会議員の3分の1=128人以上)には、県関係では奥野信亮衆院議員(県3区)が呼び掛け人の1人となり、高市早苗衆院議員(県2区)も名を連ねた。田野瀬良太郎衆院議員(県4区、党県連会長)は参加していない。それぞれの所属派閥の影響もありそうだ。

 もちろん勝手な感想だが、今ある政党の中では、幅の広さや懐の深さでは自民党がトップではないか。人数が多いというだけでなく、政権の座にあることへの執着と自負の強さが群を抜いている。経験も豊かだ。今度の衆院選では、県内四つの選挙区すべてで民主党が勝つかもしれないなどという声さえ聞かれるが、果たしてどうなるか。

 自民党への逆風はすさまじいものだと思う。地方選と衆院選は別物と言って済まされるようなものではあるまい。しかし、だからこそ同党は“奇策”だろうと何だろうと仕掛けていくに違いない。選挙戦の中で埋没してしまわないよう、ほかの政党も知恵を尽くして戦わねばならない。

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