特集奈良の鹿ニュース

金曜時評

不心得者を許すな - 編集委員 辻 恵介

 「ペットボトルも次からはつぶしてきてくださいね」―とあるスーパーでリサイクルコーナーの係のおじさんに、やんわりとしかられた。謝りながらアルミ缶などをボックスに入れていると、「こんなん入れてますねん」とおじさんは食べ残しの食材が何種類も入った生ごみの袋を見せてくれた。決められたごみ出しの日が待てず、わざわざ買い物のついでに置いていくらしく、客のマナーの悪さを嘆いていた。

スーパーは販売競争が激しく、大規模な店舗が増える一方で、閉店を余儀なくされる中小の店も増えていくばかり。“冷蔵庫”代わりに身近な店を頼りにしていた高齢者にとっては、行き場を失うことになり、遠方への食料品買い出しが新しい悩みの種となっている。車がある人や、だれかに頼める人はいいが、歩いて遠くまで出掛け、思い荷物を持って帰るのは若者でも難儀なことだ。

子どものころ、トラックに食料品を積んで定期的に巡回する業者がいたが、あれはありがたい存在だった。自転車に乗って豆腐を売るおじさんもいたが、ボウルなどを持参すれば袋も不要で、今思えばいいエコスタイルだった。こうした業者が増えてくれれば高齢者にもうれしい存在となろう。

 一方、レジ袋削減や有料化の動きなどでマイ(エコ)バッグ持参のお客が増えてきたものの、マイバッグを隠れみのにした万引も増えているらしく経営者にとっては非常に悩ましい事態だという。「万引犯と純粋なマイバッグ利用者との判別がつきにくく、各店の保安員も四苦八苦しているのが現状」(4月27日付第1社会面)らしい。

 スーパーではないが、あるコンビニでは月に20万円ぐらいの万引被害にあい、ついには店をたたんでしまったという話もある。ここまで行くと状況は極めて深刻。どうも万引という犯罪に対して、今の社会や法律は甘すぎるように思える。

 自分さえよければいいという、一部のわがままな不心得者のために余計な仕事や損失が増え、経営が圧迫され、それが身近な存在だった店が消えていく一因となったとしたら何ともやりきれない。

 さて、マナーといえば、奈良市議らがセッティングしてくれた「感謝の夕べ」に主役の藤原市長が欠席したという話は、出席者らから非難の声が挙がる事態になってしまった。最後の本会議を終えて、今期限りで引退する同市長らへの謝意を示すための集いであったが、市長は体調不良を理由に欠席した。

 補正予算の否決など、思い通りに事が運ばなかったという無念の気持ちは理解できるが、関係者の在任中の労をねぎらう場であったことを考えれば、出席するのが公人の対応ではなかったか。最初だけでも顔を出せば、それですんだかもしれない話が、後々まで尾を引きそうな形となってしまった。感謝の気持ちは大切にしたいものだ。

特集記事

人気記事

  • 奈良の逸品 47CLUBに参加している奈良の商店や商品をご紹介
  • 奈良遺産70 奈良新聞創刊70周年プロジェクト
  • 出版情報 出版物のご購入はこちらから
  • 特選ホームページガイド