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金曜時評

少子化の根は深い - 編集委員 北岡 和之

 厚生労働省が発表した人口動態統計(概数)で、女性1人が生涯に産む子どもの推定人数を示す合計特殊出生率が、平成20年は1.37。3年連続の上昇だという。

 前年は1.34、前々年は1.32となり、過去最低だった平成17年は1.26だ。厚労省は「晩婚化を背景に30代の出産が増え続けていることや減少していた20代の出産が下げ止まり傾向にある」と分析しているという。では、わが奈良県はどうかといえば、全国平均の1.37に対して1.22で、前年と同じ。近畿2府4県では唯一の横ばいだ。

 以前にもこの数字に触れたことがあるが、国力そして地域力という面で、関心を持たざるを得ない指標だ。合計特殊出生率が低い都道府県は東京1.09、北海道1.20、奈良と京都1.22、神奈川1.27、大阪と埼玉1.28、千葉と宮城1.29…と続く。

 人口維持に必要とされる水準は2.07というから、奈良県にしてもまだまだ人口減少は続くと予測される。県人口が140万人を切るのも時間の問題だろう。

 関連するが、奈良新聞は5月11日付1面で県の少子化実態調査の内容を報じている。昨年8、9月のアンケート調査や、昨年12月から今年2月にかけてのグループインタビュー調査などをまとめたものだ。その結果は「合計特殊出生率が全国平均を大幅に下回る一方、夫婦間の子どもの数は全国平均より多い」というもので、これについて県は「女性の未婚率が全国より高く、独身者が多いことが要因」と分析している。

 調査データの分析から、県が経済支援の必要性をしていることもうなずける。対策を熱心に模索していることも感じられる。

 だが、人口維持に必要な水準が合計特殊出生率2.07というのであれば、本県の1.22はとんでもなく低い。

 大げさだと言われるかもしれないが、少子化は国の力量に影響する。その一つは軍事力であり、人口減少はいや応なく軍事力を弱くさせていく。誤解されては困るが、ここで「産めよ、増やせよ」で人口と軍事力を大きくしていこうと言っているのではない。核実験を強行し、核武装化に突き進もうとしているかのようにみえるどこかの国に正面から対抗すべきだと言っているのでもない。

 意識するか、しないかにかかわらず、時代・社会とともに日本は少子化への道を進んできたのであり、それは「古き良き時代」を復活させようとすることでどうにかなるものではないような気がするが、どうだろうか。

 合計特殊出生率という数字の多少の上下に一喜一憂しても仕方あるまい。この数字が2.07に到達できるかどうかであり、政治や行政はその確かなプランが描けるかどうかだ。これまでのところ、明確なビジョンを打ち出している政党も自治体もないようにみえる。

 そうしたビジョンを示し、みんなで進んでいくか、別の生きる道を探すかだ。

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