特集奈良の鹿ニュース

金曜時評

「説明責任」の重み - 編集委員 辻 恵介

 ここへ来て、にわかに政治の世界が慌ただしくなった。11日の民主党小沢一郎代表の辞任表明を受けて、大型連休で眠っていた感があった政界が、衆院解散・総選挙をにらんで大きく動き出した。「政治生命を懸ける」と公言してきた「次期衆院選で勝利し政権交代を実現」というシナリオに狂いが生じて、小沢氏自らが身を引くことでしか事態の修復・好転が図られないと判断したための辞任劇だ。



 だが、この決断には「遅すぎる」といった声も根強い。各種世論調査で自民党麻生内閣の評価が、西松建設の巨額献金事件で小沢氏の公設秘書が逮捕されて以降、じわじわと上昇、逆転している。時の流れに身を任せ、事件の風化を待つ、といった安易な考えでは当然なかっただろうが、どうもタイミングが気になる。13日の党首討論がもし開かれていたなら、どちらに軍配が上がったか、大いに気になるところではある。「情勢好転せず」―そのことも踏まえた、この時期の辞任だったのだろう。



 それにしても、今回もまた政治家の「説明責任」は果たされず、小沢氏の説明はあいまいなままだった。最近、国民や有権者が知りたい部分について、十分に説明しない政治家が実に多くなってきているように思える。



 身近なところでの話でいえば2月6日付小欄で、同月1日の橿原市議選で、かつて同党に所属していた元議長が落選した話を書いた。11年にわたり市税の一部を滞納し、一方で議員報酬を受け取っていたことが発覚したが、会見では滞納の詳細について明らかにしないまま議長辞職と離党で幕を引いてしまった。結果、選挙では得票を半減させて涙をのむ形となった。



 選挙の神様とも言われ、地元でも絶大な人気を誇る小沢氏だけに、今後まさかそんなことにはならないだろうが、ことお金の問題、政治とカネの問題について国民感情は相当厳しくなっていることをよく知るべきだろう。



 説明責任といえばもう1人。こちらは現在進行形だが、高取町長の植村家忠町長も、その説明責任をめぐって注目を浴びている。一連の町土地開発公社(理事長=植村町長)の保有地売却をめぐる本紙報道などに対して「虚偽や捏(ねつ)造部分が大半」などと書いた文章が、町の広報紙に別刷りの形ではさまれ、約2800世帯に配布されたという。



 公費を使って、「緊急のお知らせ」をしたことに対する疑問の声は日増しに強まっている。そこまでする必要性は、一体どこにあるのか。しかも、町民が知りたいことに答えていない説明、とあっては町民を納得させられるはずがない。まことに不可思議な対応だ。



 さて、冒頭の話に戻る。小沢氏の後継を選ぶ民主党の代表選が、あす16日に行われる。事実上、岡田克也、鳩山由紀夫両氏の戦いとみられるが、選出後に党内を「1枚岩」にできるかどうか。今後の政局に大きく影響するだけに、土曜決戦の行方に注目が集まる。

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