特集奈良の鹿ニュース

金曜時評

まずは情報公開を - 編集委員 北岡 和之

 前町長が汚職事件で失職した高取町。その波紋はいまだに収まっていない。相変わらずの厳しい財政事情の中で、前町長も深くかかわっていた同町土地開発公社の問題が不透明感を残したままとなっている点が大いに気にかかる。なぜ、もう少しすっきりした説明がなされないのだろうか。同公社の理事長でもある植村家忠町長に「ガラス張り」の説明を求めるしかないのではないか。



 昨年3月に設置された町議会の町土地開発公社等に関する調査特別委員会の論議にしても同様で、多岐にわたるとみられる問題の全容を解明するまでには至っていない。町のイメージダウンにつながる問題がいつまでも尾を引いて困るのは町民であり、植村町長が先頭に立って詳しく説明する必要がある。



 21日に植村町長は町役場で記者会見した。本紙記者によると、その中で植村町長は町土地開発公社理事会における論議の内容を公開する考えはあるかとの問いに、いずれ公開したいとの意思を示しながらも「もうしばらく公社の問題の情報公開は延期をしたい。今は公開の意思はない」と述べたという。



 まずはこの発言を懸念する。配慮しなければならないことがある、というのは分からないでもないが、就任から1年以上たった植村町長であれば、同公社理事会の内容は公開してもいいのではないか。むしろ、率先して公開に踏み切るべきだと思う。



 植村町長は本紙などの報道に不満を抱いてるらしいが、不透明な部分や疑問に思われる部分がうかがえる限り、指摘してゆかねばならないのが報道だ。県議会議員を務めたこともある植村町長はそんなことは百も承知のはずで、公社理事会の内容公開が疑惑をぬぐい去るために最もいい方法ではないかと思うが、いかがだろうか。



 公社が保有する土地の売却問題にしても、地元の医療法人「中川会」をめぐって、公社理事会でどんなやり取りがあったのか、本当のところを知りたい。中川会の1億円寄付の話についても同じで、植村町長とほかの公社理事との間で認識が異なっていたとしたら問題であり、やはり理事会でどのようなやり取りがあったのかについて正確な再現を求めるしかないのではないか。



 本紙記者によると、先の会見で植村町長は前町長と地元業者の間で証言が相反している例も挙げたという。そうであれば一層、真実はどれかを徹底して追及すべきだ。前町長と中川会との間のことにしても、分からない点があると済ませるのではなく、着実に真実へと迫っていくべきだと思う。



 町土地開発公社をめぐっては、前町長の事件ばかりでなく、さまざまな意図的な(つまり政治的な)思惑が交錯してきたに違いない。だからこそ、事実を一つ一つ積み上げるような解明作業が求められる。植村町長は、自身が意図的に振る舞うのではなく、「ガラス張り」の情報公開に徹してはどうか。

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