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金曜時評

説明責任は免れぬ - 論説委員 小久保 忠弘

 「巽(たつみ)高取雪かとみれば、雪ではござらぬ土佐の城」とうたわれ、白壁の景観をたたえられた山城跡をもつ高取町は、昨年の町長汚職逮捕という不祥事を経て、旧藩主家の現町長が選挙で登場した。この選択は、やり手だったが法を犯して転落した前町長に絶望した町民のたんなるノスタルジーの結果ではあるまい。現町長は自民党県議を3期12年務めた実績がある。



 あの選挙では植村家忠氏が2560票で当選、対する正木敦氏(共産推薦)が1848票と意外に善戦した。投票率は67.78%で前回より伸びた。町政刷新を願う住民は、赤字財政からの脱却など、大きな期待を込めて“殿様”を役場に送り出したのではあるまいか。



 その植村町長が理事長を務める町土地開発公社が、保有地を取得時の10分の1以下で、町長と密接な関係にある医療法人に売却しようとしていたことが分かった。



 同公社が福祉施設建設用地として雑種地約8000平方メートルを約4億円で購入していたうち、約7500平方メートルを「4050万3000円」と、端数まできっちり医療法人に売ることを画策していたことが公社理事会の予算審議で明らかになった。当然、「異常な安値は問題」と批判の声が出て再検討されることになった。



 この医療法人は植村町長の母親が過去に理事長を務めていたという。常務理事は町長の同級生というから、密接というよりもきわめて濃密な関係だ。さらに、この医療法人から町に「1億円を寄付する」と町長が明言したという。



 不可解な話はまだ続く。本紙の調べでは、植村町長は、この医療法人の老健施設増床に意見書を添えて県の支援計画に推薦応募していた。翌日の公社理事会で土地売却が問題になり、紛糾したが、町長は県への推薦は黙っていた。医療法人と結託して事を運んでいるとみられてもしかたのない行状というべきか。



 「李下に冠を正さず」「瓜田に履(くつ)をいれず」というのは公人たるものの基本の基であろう。疑いのかかる行為は細心の注意を払って避けるべきで、ましてや自己や親族の利益を図るためとみられること事態が恥と思わねばならない。



 植村町長は「昨年は、町が大混乱に陥っている中での船出でありましたが、町民の皆様方のご理解とご協力をいただいたおかげで、何とか乗り切ることが出来…」と4月号の町広報に所信を載せている。前町長の不祥事から立ち直り、赤字財政脱却を図るためには、まず町民に今回の事実経過を詳しく説明することが第一であろう。



 人口規模の割にというべきか、県内では市町村長の不祥事が目立つ。前高取町長の前には、生駒市長や同市議会議長、昨年末は天川村長逮捕があった。もういいかげんにしてほしいというのが県民の声だろう。

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