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金曜時評

受け入れに工夫を - 編集委員 水村 勤

 脳性まひの障害のため車いすを使う下市町の少女の中学校就学がこじれている。地元の下市中学でも8日、入学式が行われたが、同町教育委員会は少女の入学を認めていない。



 本紙記者の問い合わせに対して「安全面と女児の能力伸張のために養護学校への進学を勧める」と言い方針の変更はないのだそうだ。



 この問題を筆者は6日付の「国原譜」で取り上げたところ、下市中学の卒業生から「下市中学を実際に取材して書いているのか。一般論を述べているだけに思えてならない」という趣旨のおしかりのメールをいただいた。この中で、校舎や体育館が階段状に並び、体育を行うグラウンドが学校の敷地から少し離れた所にあることなど、いろいろな施設の問題点などの指摘が続いた。さらに「個人としては一般生徒の安全も考え、新校舎を別の場所(中央公園付近)に建設すべき」という注文もあった。



 平坦部の学校の校舎と比べると、この車いすの少女が学ぶためには、現地の設備は安全面でかなり問題がある、というのだ。確かにその通りだと思う。段差を少なくしたり、エレベーターなどの設備を設置するのも簡単にはいかないのだろう。安全面の観点に立てば、町教委の言い分に一定の説得力があるようにも思えるだろう。



 だが、ちょっと待ってほしい。少女は地元の小学校に6年間学び、地域の友だちとともに卒業した。障害の面から養護学校の小学部に入学する道も選択肢としてあったと思う。県内には障害を持つ子供たちが養護学校に多く在学する傾向もある。



 しかし、両親は少女が地域の学校でともに学ぶことを希望して今日に至ってきた。すべての面で健常児と同一の学習というわけにはいかなかったであろうが、6年間の小学校生活は「地域で学びたい」という希望をさらに強めることになった。「地域で学びたい」という叫びはそのまま「地域で生きたい」という、人間の生きる根源的な要求でもある。その声に謙虚に耳を傾けたい。



 町教委が就学通知を発行せず、下市中学の入学式が開かれた8日、県教委は少女宅を訪れて保護者と懇談した。保護者の意向を聞きながら、少女の就学問題を解決しなければならない。一方で少女の教育保障も日々平行して手を打っていかなければならない。難しい対応が始まった。



 県教委幹部の1人は「対立がクローズアップされているが、子供を置き去りにして論争が続くことは望んでいない。柔軟にいろいろな選択肢も考えながら子供の教育保障のため1日も早く解決しなければならない」と語っている。同時に「(少女は)下市町の子供であることも厳然たる事実」と言い切った。



 当面、県教委が主導して問題解決に当たるが、町と町教委の責務がなくなったわけではない。地域の子供の教育を守るために、多くの知恵や支援を結集してもらいたい。

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