注目記事奈良県内の自治体異動名簿掲載

金曜時評

急げ「医師の確保」 - 編集委員 辻 恵介

 新年度が静かにスタートした。新体制になった所も多いが、年度末から県内医療をめぐって動きがあったのでまとめておきたい。



 生駒市で先月21日に勤務先で意識を失った新聞販売所従業員の男性が、県内の6つの医療機関に受け入れを断られ、大阪府内の病院に搬送後に亡くなるという事案があった。28日になって明らかになったが、大淀や全国各地で起きた悲劇の教訓は生かされなかった。



今回、現場の救急車内で隊員が医師の指示を受けながら蘇生(そせい)措置を施しながら搬送先を探したが、打診した奈良や生駒市の六医療機関から「ベッドが満床」「処置が困難」などの理由で断られたという。



 現場では、命を救うために関係者による最大限の努力がなされたのであろうが、残念ながらここでも設備や医師の慢性的な不足という、日本の医療現場の縮図が見られた。



 31日の関係機関による再発防止のための会議で県は「心肺停止の患者については4月中にも受け入れ可能な対策を講じる」とした。これは早急に実現してほしい。



 一方、鳥取大学病院救命救急センター(米子市)で「54歳の教授ら救急医4人全員が3月末に一斉に辞職する」というショッキングな記事があった(3月29日付2面)。激務による心身の疲労や人員不足、病院への不満などが、その理由だという。



 医師不足は、個々の病院任せでは改善できないところまで来ている。国の財政的な支援で必要な分野の医師を育成・確保し、医療事故や裁判に対するフォローもしていかない限り、救急医療の明日は光が見えてこない。



 そんな中、30日に県健康安全局は「県地域医療等対策協議会」の中間報告を発表。医師確保について「県が短時間正規雇用制度の導入を支援し、勤務医の過重労働を軽減。医師のライフステージに応じた多用な働き方を支援し、離職防止と定着の促進を図る」との方策を提案した。これが具体化されれば、医師が睡眠や休息を十分とれるような体制づくりにつながっていくことだろう。



 こうした報告も踏まえて県は1日付の人事異動で、初めて「医師・看護師確保対策室」を健康安全局地域医療連携課に設けた。同室は今春のなるべく早い時期に「県臨床研修連絡協議会」を立ち上げ、魅力ある研修プログラムの策定などを行い、まずは研修医らの確保を目指すという(2日付第1社会面)。



 また、(1)医師の短時間正規雇用制度を導入する医療機関への助成(補助率3分の2、国・県とも3分の1)ができた(2)医療事務作業補助者(医療クラーク)を設置する助成(補助率100%、国・県とも2分の1)が新設された―ことなどを各病院に紹介し、新制度の導入などを呼び掛けるという。



 「住民が安心して暮らせる」ために、スタッフにかけられた県民の期待は大きい。同時に関係機関のさらなる連携強化を望みたい。

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