特集奈良の鹿ニュース

金曜時評

無駄金を監視せよ - 論説委員 小久保 忠弘

 以前、荒井正吾知事に新年度予算について聞くと「積極予算でばらまきですよ」と語ったことがあった。なるほど先週発表された21年度当初予算案は、総規模で8年ぶりの増加。特別会計の繰越金を「埋蔵金」として活用するなどの妙手まで見せた。「経済活性化と暮らしの向上」を掲げ、県民ニーズをふまえた施策を積極的に実施するというから心強い。緊縮財政が合言葉になっている時代に、県庁が先頭切って積極性を鼓舞するのは気分だけでも明るくなろう。総額4700億円といえば県内最大規模の“企業”である。是非はともかく、公共事業に頼らざるを得ない県の実情をまず認めねばなるまい。



 荒井知事は「部長連中はかばんに札束を詰め込んで商店街を回り、どこにカネが必要かを聞いて回るぐらいでないと」とも言っていた。経済活性化へ率先垂範、その手腕に期待したい。



 一方、大阪府の橋下徹知事は、就任2年目で11年ぶりに赤字会計脱却を果たす見通しを立てたという。職員給与を全国最低水準まで引き下げたほか、私学助成や市町村補助金のカット、減債基金の繰り入れ中止など経費削減に「大なた」を振るった。



 その手法はメディアを巧みに利用しながら分かりやすいパフォーマンスを交えて府民に訴えたのが成功したといえるが、何はともあれ積年の病弊だった赤字財政を黒字にしたという事実は重い。言葉だけで実質が伴っていないと誰も信用しない。企業もそうだが数字やカネという現実は、はっきりしている。橋下知事の断行した1100億円の収支改善は、府下のみならず多くの首長の励みになろう。



 県内市町村でも財政危機に陥っている自治体が少なからずある。「第二の夕張」という言葉がトラウマになって、どの自治体も「健全化」に躍起だ。市長給与20%カット、副市長や教育長給与10%カット、職員給与も10%カット、退職金30%カット―。補助金は市民体育祭から各種イベントに至るまですべてカットして臨んでいるという市もあった。もはや「聖域」はない。合理性に欠けるものはすべて削減する覚悟だという。



 さらに税収確保のために、滞納住民税の回収には各市が真剣に取り組んでいる。県も4月から滞納整理室を新設して本腰を入れるらしい。公正で公平な受益者負担の原則を貫くことこそ自治の原則であろう。



 そんな中で、JR奈良駅前に建設予定の外資系ホテル事業で奈良市の藤原昭市長は不可解な対応をしている。用地から出た石炭ガラの処分をめぐる不明朗さはこれまで本紙が指摘しているところだが、処理費用の2億4000万円が無駄金になってしまうのではないかという懸念は市民が誰しも持つはずだ。



 着工の遅れから遷都1300年祭開催前のオープンは絶望的だともいう。それでもこだわる理由は何なのか。こんな「ばらまき」はあってはなるまい。議会のチェックを望む。

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