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金曜時評

祝福得る受け皿を - 編集委員 水村 勤

 奈良市がJR奈良駅西側に進める外資系ホテルの誘致問題で、建設事業を行う事業会社「JR奈良駅前ホテル開発」(以下、ホテル開発)の資金調達が依然として見通しがつかないことから、事業の実現を危ぶむ声が強い。



 いま焦点となっているのは、建設予定地に埋まる産業廃棄物(石炭ガラ)の撤去費用を奈良市が補正予算に組むことの是非だ。なぜ、産廃撤去費用として約2億5000万円を市が負担しなければならないのか。



 誘致予定の国際級ホテルは、米ホテルブランド「コートヤード・バイ・マリオット」であるが、ここはホテル事業を運営するだけ。ホテル建設は昨年7月に破綻(はたん)した大手ディベロッパー「ゼファー」が計画し、10億円で市から土地を購入。同社の調査で石炭がらの存在が明らかになっていた。つまり、土地の瑕疵(かし)について市が責任を負う問題が出ている。



 ゼファーの事業を継承した「ホテル開発」に対しても市に責任がある。もちろん、事前工事は遅れている。しかし、それ以上の懸念は、出資先の名前が取りざたされながら総額75億円といわれる事業主体のスキーム(枠組み)が固まっていないことである。



 奈良市議会が神経質になるのも、当然のこと。予定地は石炭ガラが埋まっていたとはいえ1等地。大切な市民の財産を売却した上にさらに“血税”を支払わなければならない。投資意欲を打ち砕く世界的大不況の中で果たしてホテルはできるのか。事業本体の信頼度を証明する必要が藤原昭市長にも「ホテル開発」にもあるわけだ。



 このままでは来年8月のホテル完成は遅れる。平城遷都1300年の祝典が予定される来年秋の開業もおぼつかない。「懸念ばかり口にして実行の伴わない反対は、ためにするものでしかない。世界から笑われる」といった声がある。しかし、ゼファーの破綻後「ホテル開発」は受け皿としていち早く名乗りを挙げたわけであるが、出資者が整わないままの見切り発車は摩擦を大きくし、事業の将来性、地域性の観点からも禍根を残す。



 予定地は市の中心市街地活性化基本計画の区域内。まさに本来は、地元経済界を挙げて推進すべきプロジェクトである。地元金融機関、鉄道事業者、ホテル事業者などが参画するスキームが本来作られてしかるべきであった。どこでボタンの掛け違いが起きたのか。



 出資の中核は国土交通省が所管する財団法人「民間都市開発推進機構」(民都)の存在だ。昨年11月、藤原市長の発表では総事業費の約50%を占める。当然“国民の血税”でもある。地元を中心とした出資のスキームが確実になって初めて、出資の道が開かれる。初めに民都ありき、ではない。



 現場の石炭ガラの撤去工事は3分の2近くまで進んでいるのではあるが、いま藤原市長がなすべきは、事業主体の信頼度を高める地元スキームの仕切り直しである。

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