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金曜時評

甘い対応の結末は - 編集委員 辻 恵介

 「選挙の年」と言われる今年の政治の流れを占う選挙の一つ、橿原市議会議員選挙が終わった。定数26に対して32人が立候補する大激戦であったが、現職20人、元職1人、新人5人に“選挙の女神”がほほえんだ。党派別では自民2人、民主3人、公明4人、共産3人、無所属14人という結果だった。



 現職21人中20人が、手堅く当選したが、7期目を狙ったベテランの平沼諭氏が唯一落選。前回は2179票だったが、今回は1618票と半減。敗因は昨年5月に発覚した「市税滞納問題」以外に考えられない、というのが衆目の一致したところだろう。



 今更振り返って何になる、との声があるかもしれないが、有力地方議員の過ちと、その後の本人や所属政党の対応について、振り返ってみることは有権者にとって決して無駄ではないと考える。



 昨年5月3日、住民監査請求で、当時市議会議長だった平沼氏が「経済的な理由」から市税の一部を滞納していたことが判明した。納税という国民の義務を果たさず、11年間という長期にわたって滞納し、一方で議員報酬を受け取ってきたというその感覚に、多くの市民が驚き、怒りを覚えた。



 いくら本税分を完納し、延滞金分も納めて誠意を見せても、その後の市民からの風当たりは強かった。共産党と公明党の市議団からは議長辞職の申し入れ書が出されるなどして結局、同氏は同月15日になって、議長の辞職と自らが県連常任幹事と県4区総支部幹事長を務める民主党の離党を表明した。



 この時の記者会見で同氏は、滞納の期間や総額、理由などの詳細は明らかにせず、説明責任を十分に果たさないままだった。一部の市民から出ていた「議員辞職」を求める声にも「初心に立ち返った姿を見てもらいたいと思う」と述べるにとどまった。



 この時もし、説明責任をきちんと果たし、潔く議員をやめていたら、歴史は変わっていたかもしれない。議長職というポストの重みを本当に自覚していたのなら、それなりの処分を自分に課すべきではなかったか。



 一方、民主党県連は当初こそ倫理委員会の開催を打ち出したが、結局離党届を受理するだけで終わらせてしまった。調査や処分もないという何とも身内に甘い対応で幕を引いてしまい「公党としての責任を果たしているとは思えない」といった批判の声が上がった。



日ごろ政治と金の問題を厳しく追及している政党にしては、あまりにも不誠実な対応だったと言わざるをえない。



 同党の3人の現職のうち若手の2人は今回1、2位での当選。政権を担う可能性があるだけに期待が大きいことの証しだろう。



 だが、何事も「けじめ」が肝要。あいまいな対応をすることで“傷口”を広げてしまうこともよくある。選挙民は、ちゃんと見ていることを、ゆめゆめ忘れてはなるまい。

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