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金曜時評

行政施策の強化を - 編集委員 松井 重宏

 初めて県内を主会場に開かれるインターハイ「まほろば総体」の開幕まで残り約半年。全国から選手ら多くの人が来県、平城遷都1300年祭に先立つビッグイベントになるとともに、地域や学校スポーツの振興にも大きな波及効果が期待されている。



 そんな折も折、県内の小中学生の体力は全国平均に比べて低いとするショッキングな調査結果が発表された。文部科学省が昨年、全国の小学5年と中学2年を対象に実施した「全国体力・運動能力、運動習慣等調査」で、50メートル走など8種目の計測値を得点化した結果、男女を合わせた県内の平均得点は小学生が全国41位、中学生は最下位となった。



 調査方法や参加率に問題点も指摘されているが、県内の児童生徒が体力面で課題を抱えているのは確かなようだ。それにしても都道府県の単位で調査結果に差異が生じるのはなぜか。子どもの体力不足は全国的な傾向で、運動する機会の増加や生活習慣の改善など対策が求められているが、地域格差を生む理由の一つには県や県教委の責任がある。



 県内では昭和59年の「わかくさ国体」開催を契機に学校、社会人スポーツとも競技力の大幅な向上が図られ、施設面でも一定の充実が図られた。しかし、その後は学校や団体など個別の努力が目を引く一方で県レベルの取り組みは緩んだままのように見える。



 インターハイが単独開催ではなく、2府4県での実施になったのは、受け入れ宿泊施設の問題も含め、総合的な判断だったと思われるが、総合開会式が25年前に開かれた国体のときと同じく県施設では行えず、今も奈良市の施設に頼らざるを得ない状況なのは残念だ。



 同大会では開催される全29競技のうち、約半数の15競技が県内で実施される。その内訳は陸上、サッカーのほか、ホッケーやボクシング、レスリングなど県勢が得意とする種目が多く、人気を集めそう。ただ、かつて全国に勇名をはせた水泳競技は開きたくても県内に対応できる施設がない。



 財政基盤が弱い県が屋内プールや大型体育館、陸上競技場など施設整備に多額の予算を割くのは難しく、いわゆる箱もの行政への批判も踏まえれば身のたけにあった施策が取られてき結果たとも言えるが、それが社会スポーツの振興や学校を中心とした競技力の向上を抑制してきたとしたら。今回まとまめられた児童生徒の体力、運動能力調査の結果とも決して無関係とは言えないだろう。



 県教委は文部科学省の調査を受けて「結果を真摯(しんし)に受け止め、体力向上に向けた取り組みを一層強化する」としているが、具体策が問われる。食育や生活指導といった基礎レベルの対策が重要なのはもちろん、学校現場だけでなく地域スポーツの充実を誘導する助成制度、指導者育成などの取り組みも欠かせない。また長期的な計画に基づいて無駄のない体育施設を順次、建設していくことも求められる。



 県内に拠点を置く野球やサッカーなどプロスポーツを誘致するのは地域経済の問題でもあり、容易でないが、観戦する機会を増やすだけでも、スポーツのすそ野の拡大することにつながる。その意味でも今年インターハイが県を主会場に開かれる価値は大きい。二順目の国体開催も、そう遠くない時期に視野に入ってくる。高校生だけでなく、小中学生や地域住民が積極的に観戦するムードづくりを進めたい。



 今年は全国高校ラグビーで御所工御所実が準優勝を果たし、きょう行われる高校野球センバツ大会の出場選考でも県勢選出に期待が高まっている。インターハイでも地元開催で健闘、好成績を残す競技が続出するだろう。そうした身近なトップアスリートの活躍が子どもたちの「スポーツ熱」を高め、行政による施設や制度面のサポートが「スポーツ参加」を推進していく、良い循環を学校や地域、家庭の中に生み出せれば「全国最低」のうれしくない評価も徐々に変わっていくに違いない。

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